ファイナンシャルプランナーの大川真理子です。
8月に入り、お盆の時期が近づいてきましたね。帰省する子どもたちと久しぶりに顔を会わせたり、実家にいる親や親戚と交流したりと、色々と予定が立っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私はお盆の時期は大体、現在住んでいる札幌にいることが多く、今年の夏はベランダで栽培しているミニトマトの収穫に精を出しています。次々と実をつけるので、どこかのスーパーに出荷できるのではと思ってしまうくらいです。
実家(関西)には年に数回顔を出しているのですが、暑い8月はついつい避けてしまいます。いつ帰省するにしても、時々戻る実家はいいものですが、気になることも増えています。
その一つが将来的に実家をどうするか、いわゆる「家じまい」です。親としては、長年住み慣れた家をこのまま子供に託すのか、あるいは手放して別の住まいへ移るのか?となかなか悩ましく、子供としては言い出しにくく、かつ考えないといけない事柄でもあります。
今回は「家じまい」について、その中でも、子供が相続した場合に使えるかもしれない新しい制度をご紹介します。
■空き家が増えたというけれど、実際のところは?
高度経済成長期に現役世代だった方にとって「住宅すごろく」は、よく知られた言葉かと思います。始めは小さなアパートから始まり、結婚して子供ができると少し広めの賃貸マンション、最終的には庭付き一戸建てを購入という、時間の経過とともに変化していく住まいの順番のことです。
自分がいなくなったときに子供に残そうと、頑張って手に入れた庭付き一戸建ても、相続人である子供が住まないケースがあり、全国的に空き家は増えています。令和5年の総務省の調査 によると、空き家数は900万戸、空き家率は13.8%と過去最高となっています。
空き家率を都道府県別に見ると、和歌山県、徳島県が21.2%と最も高く、次に山梨県の20.5%が続きます。みなさんがお住まいの地域では、周りに空き家はありますか。
また、現在、家の維持管理費は年間どれくらいかかっているでしょうか?いつもつけている家計簿マムでこの機会に是非、確認してみましょう。
■相続した実家、考えられる取扱い方法二つ
実家を相続したあとはそのまま住んだり、誰かに貸したり、売却するといった活用方法があります。このような活用が難しい場合は、固定資産税や維持費が将来的に負担になる可能性もありますので、「相続放棄」を選ぶケースもあります。
「相続放棄」を選ぶと、被相続人(相続財産を渡す側、つまり、お亡くなりになった方のこと)からの相続が一切なくなります。土地・建物の相続権もなくなりますので、固定資産税や維持管理費を払う必要もなくなります。もちろん預貯金などの財産の相続権も消えますので、相続放棄を選ぶ際には全ての財産の確認をしてから検討しましょう。
■「相続したけれど不要な土地」を国に引き渡す制度がスタート
今までは土地や預貯金、負債など、プラスもマイナスも合算して全て相続するか、全て相続放棄するかどちらかの選択肢でしたが、土地だけの相続放棄ができる「相続土地国庫帰属制度」が令和5年4月27日から始まりました。相続したけれど不要な土地の所有権を、条件が合えば国に引き渡すことができる制度です。
■相続土地国庫帰属制度が利用できる人・対象外の土地・費用
相続土地国庫帰属制度を利用するには、まずはじめに、法務局へ相談をします。その後、申請書類の作成、提出を行い、承認された場合は決められた費用を納付するという流れです。
相続土地国庫帰属制度が利用できるのは、相続や遺贈(遺言によって財産を贈られた人)で土地を取得した相続人です。また、兄弟など複数人で相続した共同所有の土地の場合は、共有者全員で申請する必要があります。
なお、制度開始前(令和5年4月27日より前)に相続した土地でも申請ができます。
それから、相続したすべての土地が、相続土地国庫帰属制度を使えるわけではありません。
・建物がある土地
・担保権や使用収益権が設定されている土地
・他人の利用が予定されている土地
・特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
・境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
などは、この制度の利用ができませんのでご注意ください。
費用についてですが、申請する際に一筆の土地当たり1万4000円の審査手数料が必要です。そして、法務局の審査を経て無事に承認されると、10年分の土地管理費相当額の負担金を納めることになります。
負担金は、一筆ごとに20万円が基本となり、土地の性質(宅地、森林など土地が何に使われているか)に応じて違いがあります。なお、「筆」とは、登記上の土地の個数を表す単位のことで、一つの土地を一個と数えるのではなく、一筆と表記することになっています。
お盆に家族が集まるこの時期は、家に対する思いや家族との絆を再認識する良い機会です。「メルマガで読んだんだけど・・」を皮切りに、家じまいについての話題を、家族で取り上げてみるのもいいかもしれませんね。
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