相続にも超高齢化社会の波が。相続人が認知症だったらどうなる?

[2025/3/11]

いつもお読みいただきありがとうございます。

過去1年のバックナンバーを確認しながら、今月の「新・大人のお金道」のテーマは何にしようかな・・と先程まで考えていたのですが、昨年2月のバックナンバーにつきまして、反省中でございます。「雪まつり、すすきの会場にて」と凍った魚が入った氷像の写真を掲載しているところまでは良かったのですが「ギョギョっとしますね。魚だけに・・。」との感想を書いていました。

自分で書いたとはいえ、ダジャレを恥ずかしげもなくみなさまにお届けいたしましたこと、お詫び申し上げます。今後はもう少し、ダジャレの腕を上げたいと思います。

その後、気を取り直して、みなさまから過去頂いたリクエストテーマを読み返してみたところ、多かったのが「相続」でした。ということで、今月のテーマは「超高齢化社会の相続」です。

超高齢化社会の相続
日本では65歳以上の方の人口割合が総人口に対して29.3%となっており、世界でもトップの高齢化率です。また、人口が減少傾向でありながらも、65歳以上の方の人口は過去最多となっています。(2024年9月現在)

この現状は、相続人(相続財産を受ける側)も被相続人(相続財産を渡す側)も、お互い高齢であることが想像できます。また、相続発生時に配偶者が認知症あるいは、子供が認知症である可能性も、全くないとは残念ながら言い切れなくなっています。

遺産分割協議の時、相続人が認知症だった場合
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を相談した上で決める手続きのことです。相続人全員で行うことになっていますが、相続人の中に判断能力が低下している認知症の方がいらっしゃると、遺産分割協議を進めることができません

この場合は、成年後見制度を利用して成年後見人を選任した後、遺産分割協議を進めることになります。

成年後見制度ってよく聞くけど、どういったもの?
成年後見制度とは、認知症等で判断能力が不十分である方を、財産の管理や契約といった面で保護し、支援する制度のことです。成年後見制度を利用するには、本人や配偶者、4親等内の親族(いとこなど)が家庭裁判所に後見開始の申し立てをするところから始まります。

その後、家庭裁判所で審判が下りると、後見が開始します。そして家庭裁判所では、ご本人にとって適任と思われる成年後見人(財産の管理や契約などの面でサポートする人)も同時に選びます

成年後見人が選ばれてやっと、遺産分割協議が始まるのですが、家庭裁判所の審判が出るまでには1~2ヶ月程度、場合によってはそれ以上に時間がかかることもあります。準備がいるかも・・と思った方は、まずは地域包括支援センターや社会福祉協議会などへ相談してみましょう。

遺産の使い道にリクエストがある場合
ご自身の遺産の使い道にリクエストがある方は、生前に公正証書遺言を作成しておくのも一つの方法です。公正証書遺言とは公証役場で2人以上の証人の立会いの下、遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、作成する遺言書です。

自分で書く遺言書(自筆証書遺言)の場合は、遺言としての要件を満たしていないなどの理由で無効になることが時としてありますが、公正証書遺言の場合は、そういった事態を減らすことができます。また、相続人に認知症の方がいたとしても、相続開始後、遺言の内容を速やかに実現することができるのも公正証書遺言です。

公正証書遺言の相談は行政書士や弁護士などの士業で取り扱いがありますが、各士業団体(例えば、行政書士会など)が時々行う無料相談会を利用すると便利で安心です。

相続に備えるための不動産のチェックポイント
超高齢化社会において、相続した家屋の放置による空き家問題も近年話題になっています。2024年8月6日付の新・大人のお金道でも、相続した実家の管理が大変という方へ向けた「相続土地国庫帰属制度」を取り上げました。

「相続土地国庫帰属制度」とは、相続した土地を国に引き渡す制度で、条件の合う方にとってはとても便利な内容となっています。気になる方はバックナンバーでお読みいただけます

相続する可能性のある不動産に心当たりがある方は、相続に備えるためのチェックポイントの確認をしてみましょう。

相続に備えるための不動産チェックポイント
・土地の境界確定や測量の完了
・土地の登記の完了
・不動産の所在地と種別(宅地とか農地とか)の特定
・権利関係(所有権、借地権、抵当権など)の確認
・必要な書類の有無(登記簿謄本または登記事項証明書、売買契約書、登記識別情報、重要事項説明書、固定資産評価証明書など)
・固定資産税評価額(固定資産税通知書に記載)

備えあれば憂いなし。少しずつでも結構ですので、チェックしてみましょう。

話し合い、情報共有することが大切
超高齢化社会では、老後資金対策と相続対策の両方を考える時期が重なりやすくなります。相続する側もされる側も、少しずつお互いのスタンスや、資産状況などを理解して、情報共有することが対策の第一歩目です。

一気に話をまとめる必要はありません。昔話なども交えながら、なごやかに話ができるといいですね。

ファイナンシャルプランナー:大川 真理子